【特集】4th story_癖

あ、寝癖。今朝は時間がなかったのかしら。あの人はシャツにシワが寄ってる。お仕事が忙しくてアイロンかける時間がないのかな。あの方は足を気にしてるなぁ。靴擦れでもできちゃったのかしら。
そんなことを思って、思わず笑ってしまう。電車や街の中で目に入った人の生活を想像してしまう癖は、いつから始まったのだろう。あまりいいことではないような気がして、気をつけなくてはと肩をすくめた。

今日はどんなお客様だろう。気を取り直して、仕事に思いを馳せる。CaSyで家事代行キャストとして働く私は、日々、お客様のお宅に伺う。定期的に行くお家もあれば、初めてサービスに出向くこともある。その多くのお客様が私に求めるのは、「お家をキレイにお掃除してほしい」というもの。

「とにかくお家をキレイにしてほしくて」
小さな男の子を抱きかかえた女性が、切実さをにじませた表情で出迎えてくれた。今日、初めてCaSyを使ってくださるお客様だ。明日から1泊の予定で、義理のご両親が遊びにいらっしゃるらしい。
宿泊ってことは、お家の滞在時間が長くなるわね。まずはリビングに散らかったお子様のオモチャを整理収納してスペースを確保しよう。お泊まりになる和室は念入りに掃除機をかけた方がいいわね。水回りも目に入るところをしっかりキレイにしなくては。
「承知いたしました。今日は和室とリビングを重点的にお掃除しましょう。水回りは、お手洗いとお風呂をまんべんなくキレイにしますね」

「仕事部屋以外を全体的に掃除してください」
一人暮らしと思われる男性は、どうやら自宅でお仕事をしているようだ。それならば、仕事も生活もすべてがここで完結しているということ。でも、プライベートの時間を過ごすであろうリビングにもあちこちに資料や本が置いてある。まずは、これらを一箇所にまとめて整理整頓したら、少しはリラックスできる空間を作れるかしら。
「私が触ってはいけないものはありますか?ないようでしたら、お掃除の前に整頓をさせていただきますね」

「いつも通りのお掃除をお願いします」
もう1年近く定期的にお伺いしているご夫婦のお宅。いつもは奥様が対応してくださるのだけど、今日は不在のようだ。何度かお目にかかっているご主人が迎え入れてくれた。ふとキッチンに目をやると、スーパーの袋に入ったままのたくさんの食材。私の視線に気づいたのか、ご主人が恥ずかしそうに口を開く。
「今日は妻の誕生日なんです。サプライズで料理をしようと思ってるんですけど、料理は得意でも片付けが苦手で……」
まぁ、素敵なサプライズ!ということは、ダイニングでお食事されるということね。
「では、キッチンのお掃除は私が後ほどしっかりやらせていただきますから、まずはご主人はお料理に専念なさってください。その前に、私はリビングとダイニングをピッカピカにキレイにしておきますね」

「リビングと廊下の、床のお掃除をお願いします」
赤ちゃんを抱きかかえたお客様は、心なしか床を強調しているように思えた。なぜだろう?そんなに汚れているようにも見えないのに。
すると、私のふくらはぎに小さな何かが触れた。さっきまで抱っこされていた赤ちゃんの小さなかわいらしい指だった。あ、そうか。お子様がハイハイの時期なのね。だから、このお客様は床を気にされているのだ。
「承知しました。床は洗剤を使わずに、念入りに拭き掃除いたしますね」

「今日は水回りのお掃除だけお願いします」
月に一度お伺いする、一人暮らしの女性のお宅。全国を飛び回るお仕事だと仰っていたっけ。だから部屋の掃除には手が回らなくて、CaSyを頼んでいるのだそうだ。いつもは1LDKのお部屋全体をお掃除するのだけど、今日は水回りだけでいいと言う。しかも、キッチンのシンクにはいつもよりたくさんの食器が。不思議に思っていると、お客様の手元の白い物が目に入った。包帯?しかも、利き手の右手ではないか。お怪我をされたのだ。だから、水回りのお掃除にお困りなのね。
「水回りのお掃除もいたしますが、キッチンの洗い物もやってよろしいでしょうか?」

これはほんの一例で。だって、10人いれば10人の生活があるのだ。10の生活があれば、10の困りごとがある。私の仕事は、その生活の欠片から、お客様の表情や仕草から、その困りごとを見つけだすこと。困りごとのすべてを解決することはできないけれど、少しでも力になりたくて、私はいつも探ってしまう。
そこまで考えて、私の癖に思い至った。電車の中で、街中で、周囲の人の生活に思いを馳せてしまうのは、私がCaSyで働くようになってからの癖だった。
悪い癖?いいや、これは私の武器になる、いい癖なのではないかと思い直す。

「ありがとうございました!困っていたので、とても助かりました」

だってどのお客様も、こう仰ってくださるのだから。

credo 4
十人十色の着地点

このお客様は何を喜んでくださるか。
その日その時のあなたに寄り添い、今日のゴールを一緒に見つける。
すべてに応えてあげたくても、時間と安全を守れない時は「ここまでなら出来る」の提案を。

photo/PIXTA

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等には一切関係ありません。

【特集:これがCaSyのキモチです。】

その他のお話は、こちらから読めます!
・1st story_おうむ返し
・2nd story_魔法使い
・3rd story_天職
・4th story_癖
・5th story_僕のうちの平和
・6th story_未来を創るのは

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