【特集】2nd story_魔法使い

部屋を走り回る子ども達。散らかったオモチャ。山のように積まれた洗濯物。それでも回り続ける、脱衣所の洗濯機。
「あぁ、もう……。どうしたらいいんだか」
専業主婦なのに、という言葉が口をつきそうになって、飲み込んだ。小学生を筆頭に4人の子どもがいる私は、朝から晩まで動き回っている。それなのに、一向に部屋はキレイにならないし、洗濯物はなくならない。夫の裕樹も手伝ってはくれるけれど、仕事が忙しくて帰宅時間は毎日遅い。この家事のループが無限に続くんじゃないかと思えてきて、気が遠くなりかけた時だった。
「今日は、時間がない人にオススメ!今、話題のサービスについて特集です」
つけっ放しだったテレビに映ったのは、エプロンを身につけた、いかにも“ベテラン”って感じの主婦と、スーツを着こなす外資系企業で働く女性だった。どうやら、家事代行サービスの特集らしい。専業主婦の私には関係のないサービスよね……とテレビを消そうとした。
「家事代行サービスは、今や誰でも使えるサービスなんです。家事代行を使えば、あなたが大切したいものを大切にできる時間が作れますよ」
そんな言葉に、リモコンを持つ手が止まる。“あなたが大切にしたいもの”だって。私の大切にしたいものって、一体なんだったっけ?

「優子さん!この資料、チェックをお願いします」
「優子さん!先方がいらっしゃいましたので、会議室へ来てください」
「優子さん!ちょっとプランについて相談が……」

かつて私は、旅行代理店で働いていた。5人ほどのグループのリーダーを任され、多忙ではあったけれど、それなりに責任もある日々。学生時代から夢見ていた旅にまつわる仕事に携われて、充実感もあった。使える時間はすべて仕事に費やしていたと言ってもいいだろう。あの時は、私が大切にしたいものは確実に仕事だったのだろうなと思う。
それが変わったのは、産まれてきた我が子の顔を見た時なのかな。学生時代から付き合っていた裕樹と結婚し、ほどなくして子どもに恵まれた。子どもを中心に、裕樹と私が笑っていると、その時間や空間、すべてを大切にしたくて、専業主婦になる決意をしたんだっけ。

でも、今は……。私が大切にしたいものをすぐに思い浮かべられない。主婦という仕事も家族も大切じゃないとは言わない。でも、なんのために、私は毎日こんなに自分をすり減らしているんだろう。それぐらい、余裕がない気がする。
「頼んで……みようかな」
藁にもすがる気持ちで、家事代行サービスを予約した。まずは、最短の2時間だけ。私に、“時間”がほしいと思った。

「大丈夫ですよ。私にお任せください」
予約をした日、玄関に現れた優しそうなCaSyさんは、挨拶もそこそこに、こう言ったのだった。その言葉に、なんだか目頭が熱くなる。なんで私、泣きそうになっているんだろう。
「今日はまず、リビングをキレイにしましょう。お客様はお好きなことをなさってください」
汚い部屋だって思われるだろうか。片付けられない人だって思われるだろうか。様々な心配が脳裏をよぎるけれど、それを片っぱしから洗い流すように、家がキレイになっていく。
「魔法、みたいですね」
ふと、そんな言葉が口をついた。
「そうなんです。私、魔法使いなんです。カボチャの馬車は用意できませんけれど、家事は私が引き受けますから、お客様はお城の舞踏会でも行ってらしてくださいね」
シンデレラ……?意外な答えに、思わず笑ってしまった。そして、笑っている自分が久しぶりであることにも気づく。

数年後。
「優子さん!今日は新規事業の打ち合わせです」
私は旅の情報を提供するWEBサイトの会社を起業した。まだ社員は私を含めて3人と小規模だけれど、再び“旅”に携わることができて、私の人生は再び動きだした。
「優子さん、今日はお料理のサービスに入らせていただきます。1週間分の作りおきを準備しますね」
あれから、我が家には魔法使いが2人、定期的に来てくれるようになった。ひとりはお掃除を、もうひとりはお料理を。今や、私たちの生活になくてはならない存在だ。

「ママ、洗濯物をたためたよー!」
素敵なことに魔法使いは子ども達にも魔法をかけ、片づけやお手伝いをできるようにしてくれた。
「優子、最近はいつも笑顔だね」
夫の裕樹も、笑顔でいる時間が増えた気がする。

私の大切なものってなんだろう。今ならはっきりと答えられる。
「仕事と自分の時間、そして家族の笑顔」
一度はその全てを諦めていた私が、CaSyという魔法使いに出会って、諦めることをやめた。
「私はいつも、あなたの味方ですよ」
そんな、とっても素敵な魔法をかけてもらったから。

credo 2
私はいつも、あなたの味方

私たちはお客様の生活に寄り添う伴走者。“私が来たから大丈夫”。
「お任せで…」の背景に言葉にできない思いがあることを知り、暮らしをまるごと受け入れる。
お客様がやりたくて諦めていたことを始めるきっかけになれたなら、社会が少しずつ変わるかもしれない。

photo/PIXTA

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等には一切関係ありません。

【特集:これがCaSyのキモチです。】

その他のお話は、こちらから読めます!
・1st story_おうむ返し
・2nd story_魔法使い
・3rd story_天職
・4th story_癖
・5th story_僕のうちの平和
・6th story_未来を創るのは

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