【スペシャルクロストークレポート・後編】 小安 美和さん × 浜田 敬子さん ―人生に「Will(ありたい姿)」を持つ者同士の“連帯”の形としての家事代行
5月26日(木)にオンライン開催した、CaSyの家事代行スタッフ(以下キャスト)の日頃の活躍を讃え、感謝を伝える年に一度の恒例行事「キャストセッション2022」。
特別プログラムとして開催した、女性の雇用創出・リーダー育成・起業家支援等に取り組む株式会社 Will Lab 代表取締役 小安 美和(こやす・みわ)さん、元AERA編集長でジャーナリストの浜田 敬子(はまだ・けいこ)さんによるクロストーク「キャストが活躍すると、社会もよくなる」。レポートの後編では、会場のキャストさんを巻き込み、依頼者とキャストとの幸せなつながり方、そして未来に向けた心のあり方に話が及んだ様子をお伝えします。
モデレーターは、株式会社CaSy 取締役CHROの白坂ゆきが務めました。
登壇者のプロフィール及び、前編はこちらから。
Contents
「Must(しなければ)」ではなく、「Will(こうありたい)」で生きていく、そのための仕事や仲間。
白坂:
日々、サービスに励んでいるキャストさんに向けて、なにかエールをいただけると嬉しいです。
小安さん:
私が代表取締役を務める会社の名前は「Will Lab(ウィルラボ)」。自分はこうしたいと思う「ありたい姿」が「Will」。Willの反対語は「Must(〜しなければならない)」。日本人って、「Must」に縛られた方がすごく多いように思うんです。学校教育でも「Must」が頻繁で、私はそれがとても苦手な子どもだったんですよね。その割には、母からの「女性は家をきれいに整えておかねばならない」という「Must」に苦しんできた。
40歳を過ぎた頃から、「Will」で生きていきたいな、と思ったんです。そしてその「Will」で生きていく人を増やすためにはどうすればいいのか研究したいと思って、自分の会社に「Will Lab」と名付けました。
キャストのみなさんはどうでしょうか。ありたい姿に向けて生きていらっしゃいますか?
白坂:
会場のキャストさんに聞いてみましょう。Sさん、いかがでしょうか。
Sキャスト:
私は、キャストをしていなかったら「ありたい姿」に向けて邁進できていなかったと思います。キャストをしていたから、働くお母さんたちとつながることができて、世界が広がりました。毛嫌いしていたPTA活動にも立候補するほど自分が変わりましたし、「いつかお金を貯めて留学したい!」という先の目標も持てるようになりました。
小安さん:
すばらしいですね!「Will」を実現するためには、自分自身の仕事を持つことがとても大切だと思っています。仕事をしたら、「お金」と「自由」を手に入れることができる。それは、自分のありたい姿を実現するための「お金」と「自由」なんです。
▲小安美和さん
浜田さん:
私の担当のキャストさんは、コロナでもともとやっていた仕事が減ってしまって、キャストを始められたと聞きました。本来やりたい仕事は違うものだけど、その「Will」のためのCaSyでもいいと思うんです。私自身も彼女にお願いして助けられているけれど、私がこのキャストさんにお仕事をお願いすることで、彼女の「Will」も助けていると思うと、支え合っているのかなと感じます。
私も助けられるし、彼女も助けられる。付かず離れずだけれど、お互いに思い合っている距離感も心地よい。家事代行の人は、単に家事をやってくださるだけの存在じゃなくて、家族ではないけれど外側にいる、緩やかにつながり合っている助け合う仲間。私はすごく、そんな感覚を持っています。
白坂:
キャストさんが持つ、「キャスト」としての顔以外の人生、そして「Will」を、お客様が支えて下さっている。そういった関係性・つながりの広がりを感じることができて、とても感銘を受けています。ここでキャストさんにも感想をお伺いしてみたいと思っています。
Oキャスト:
お二人のお話を伺って、すごく元気を頂き、今日参加してよかったな、と思っています。
私は◯◯ちゃんのお母さん、◯◯さんの奥さんとばかり言われながら、去年還暦を迎えました。「人生100年時代」と言われて、これからどうしようと思ったときに、「人の役に立つ仕事がしたい」と思うようになったんです。去年、お客様に「私はあなたがいないと生きていけない」と言われたことがあって、涙が出るほど嬉しかった。CaSyで働いてよかったと思いました。100歳まで働けるかはわからないけれど、「もういいよ」と言われるまでお世話になりたいと思います。
Uキャスト:
今日お二人のお話まで参加させていただいて、本当によかったです。お客様にたくさんのおみやげや、「休憩してね」とアイスをいただいたりしたことがあります。サービスだけの関係ではなく、人と人として互いに大切にし、つながっていく関係性について、あらためてお客様の立場であるお二人からお話いただけると、感動して涙が出てしまいます。お客様のお役に立てていることが、とても嬉しいです。
小安さん:
私も感動してしまいました。明確な「Will」があってCaSyにいらっしゃる方もいれば、なにがやりたいかわからないままにCaSyに所属している人もいると思いますが、それは全然大丈夫。今、私はその「Will」に向かう途中なんだ、と思いながら、目の前のことに一生懸命向き合えば、人と人とのつながりのなかで見えてくるものが必ずありますから。
逆に次は、キャストさんの想いをお客様側に伝える場を作るのはどうでしょう?
浜田さん:
すごくいいアイデアだと思います。キャストさんがこの仕事にこれだけ誇りを持って、プロフェッショナルとしてやってくださっているという想いや、「これだけ自立ができた」というエピソードを知るのは、頼む方も罪悪感がなくなるのではないでしょうか。
▲感想を述べてくださったキャストさんたち
お客様とキャストの、「家族ではないけれどお互いに助け合う仲間」としてのつながりがもたらすもの。
白坂:
貴重なお話やアドバイスを、ありがとうございました。さて、最後に今回のクロストークのお題、「キャストが活躍すると社会がよくなる」についてお伺いできればと思います。
浜田さん:
女性が家事を手伝ってもらうことで働き続けることができる点もですが、キャストさんがこのお仕事で経済的に自立できる点もとても大切だと思います。自分の自由を得て、生き方の選択肢を広げることができます。
私が働き出したのは30年以上前なので、女性はまだまだお茶汲み・寿退社があたりまえだった。私の同級生はほとんどみんな、一度仕事を辞めています。
子どもの手がある程度離れてから働こうと思っても、自立できる仕事に就くことは難しいんです。その上離婚するとなると、みんな本当に生活に困っています。経済的に自立することが難しいから離婚ができない、という人もいます。
「自由」というのは、意に沿わない結婚から逃げられる、という意味でもある。子どもをちゃんと育てるということにもつながります。
それから、家族以外の人といかにゆるいつながりを持ち続けるかが、人の幸福感に関連する、と言われています。同じ場所で働く仲間や、地域の人たちなどがそれです。キャストさんとお客様も、そんなつながりのひとつですよね。
小安さん:
キャストのみなさんにとっての幸せ、お客様にとっての幸せ、両方が成り立つ仕事であるといいな、と思いながら聞いていました。キーワードは「つながり」なんでしょうね。「良質なつながり」。それがキャストさんによって紡がれていくと、お客様の幸福度も上がる。
一方で、対等な関係なのだから、お客様側に「どのようにしてキャストとつながりを作るか」という教育も必要ですよね。双方を教育できて、お互いがWin-Winになれる仕組みづくりを、CaSyさんにはとても期待しています。
浜田さん:
それから、CaSyで働いて楽しい、というキャストさんの声が聞けてとてもよかった。仕事を30年以上やってきて、もちろんつらいこともたくさんありました。それでも喜びもあったから、続けてくることができました。働くことが楽しい、という感覚をぜひ、キャストさんには持っていただきたいです。
▲浜田敬子さん
小安さん:
キャストさんのお仕事は、働く女性や男性、何らかのご事情で自分では家事ができない人をサポートできる素晴らしいお仕事です。いろいろな悩みもあると思うのですが、ぜひ楽しんで働くことを続けていただきたいですね。仕事を楽しんでいる方が家に来てもらえたら、依頼する側としても嬉しい。ご自分のことを大切にしながら、頑張ってくださいね。
白坂:
互いに支え合い、感謝と敬意でキャストさんとお客様がつながり合える世界を創るために、CaSyとしての取り組みを進めていきたいと思います。お2人とも、今日はありがとうございました。
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